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ラウンド・ブリリアント・カット・ダイアモンドの外観のモデリング

ブリリアンスの分析について

AGTジェムラボラトリー

上杉 初


今回はジェム アンド ジェモロジー1998年秋号に掲載されたラウンド ブリリアント ダイアモンドについての論文を2回に分けて紹介します。今日、日本のマーケットにおいてラウンド ブリリアント ダイアモンドのカット評価が一般的に行われていますが、今回の論文は非常に興味深い内容であり、カット評価の今後のあり方について再考する機会を与えてくれているのかもしれません。
第1回目はモデルの説明、メトリック(測定基準)の定義、加重平均ライトリターンについて、クラウン、パビリオン、テーブルのパラメータ(媒介変数)の結果について説明していきます。

モデルの説明

我々のモデルは、ファセット加工ダイアモンドの形状及びダイアモンド内を光がどのように通るかを左右する物理的特性との用法に両方を数学的に表す。外観を作り上げる要素の1つ1つを分析し、最終的には、プロポーションがブリリアンス、ファイアー、及びシンチレーションのバランスに及ぼす影響の研究に活用する。本論文で提示するモデルでは、ガードルがあり、全体にファセット加工を施した標準的なラウンド ブリリアント カットダイアモンドと光との相互作用を検証する。

様々なプロポーションのラウンド ブリリアントについて、その外観を表す概念であるブリリアンス、ファイアー、及びシンチレーションを比較するには何らかの量で表されるものと、その相対的尺度をそれぞれの概念ごとに定める必要がある。ブリリアンスなどの概念の測定と比較に役立つ、「特定条件の」数式をメトリック(測定基準)という。照度及び観察時の配置を平均化するために、モデル化したダイアモンドから戻る光の量を定量化するブリリアンスを表すメトリックを導いた。他の要素(例えば地色またはインクルージョン)によってラウンド ブリリアントの明るさが変わることはあるが、ライト リターンはダイアモンドのブリリアンスの基本的特徴である。ファイアー及びシンチレーションに対するプロポーションの影響についても、今後の報告書で扱う予定である。対称性、照明条件などが、これらの外観の三概念にどのように影響するかについても、検証するつもりである。本研究の総合的な目標は、カットがファセット加工ダイアモンドの外観にどのような影響を及ぼすか、包括的に理解することである。

メトリックの定義:ブリリアンス

我々の目的は、このモデルを用いて、ブリリアンス、ファイアー及びシンチレーションが、ラウンド ブリリアント ダイアモンドのプロポーションと共にどのように変化するか調査することである。ブリリアンスから始めることには、いくつか理由がある。第1に、ブリリアンスは、ダイアモンドの外観の内一番先に気付くものだからである。第2に、所望の結果が明確なことである。つまり、明るい石は良く、暗い石はそうではない。最後に、これまでにカットを調査した研究の大半が、ブリリアンスに焦点を当て、現在の業界のカット論争をあおっているのは、この研究だからである。

コンピューターのモデルを使用する1つの利点は、数千通りのプロポーションを調査できることである。しかし、こうした多くのデータを意味のあるものとするためには、ブリリアンスの測定基準を定義し、様々なプロポーションを比較する必要がある。このライト リターンを表す種々の数式を作ることができるが、それぞれの式にはブリリアンスの成分及び光源、観察時の幾何学的位置、人間の目の反応、及び人間の脳の反応について、明確な、または暗黙の仮定を行う必要がある。

加重平均ライト リターン

本論文で述べる測定基準は加重平均ライト リターン(WLR)と呼ばれる。これは、選択された照明でモデル化したダイアモンド プロポーションのそれぞれに特有のものである。

WLRは、ガードルより上のあらゆる観察位置に対して、仮想ダイアモンドのクラウンを通して戻る光の加重総量である。光源、ダイアモンド及び観察者の位置関係を固定した上で、クラウンを通って戻る光の全てを使用するのではなく、戻る光線の相対的重要度を出る方向によって加重(すなわち加重平均)した。

 

通常ダイアモンド観察者は、主にフェース アップの外観に基づいてダイアモンドを評価するが、ぎらつきを最小限に抑え、しかも様々な角度から石を考察するために、石を「揺らす」ことも行い、垂直(フェース アップ)に最も近い観察がこの評価で最も重く扱われる。我々が選択する測定基準でも同様に評価がなされることを求めた。従って、まっすぐ上に出る光線は、水平に出る光線よりはるかに重要度が増し、出る角度が変化するにつれ、その重要度が滑らかに変動するように従った。加重係数として、コサイン関数の平方を選択し、垂直方向から測定した出射角度に当てはめた。この加重関数を使用し、測定基準の数のスケールを0と1の間に抑えた。例えば、入射した光全部がクラウンからまっすぐ上に出る仮想ダイアモンドを考えると、WLRは1.000になるが、入射した光全部が水平に対して25゜の角度でクラウンから出る場合、WLRは0.179になる。光が水平方向でしかクラウンを出ない(またはクラウンから出る光がない)場合、WLRは0になる。

加重平均とは?

日給6千円2人、1万円5人、1万2千円3人の平均日給の算出は、3種の金額合計2万8千円を3で割るのではなく、人数を掛けた総金額9万8千円を総人数10で割る。金額ごとに人数をかけることを統計では加重(ウエイト)という。クラウンから出射する光線の様々な方向を垂直余弦成分1から水平余弦成分0との間で、数値を二乗(光の強度は振幅の二乗の概念)し、相対的な重要度をつけて加重した値が総金額に相対する。人数に相当するのは、色光ごとに異なる方向に進む仮想ダイアモンド内を透過するトレースした光線の総合計である。(教育部 田近)