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メレーサイズの合成イエロー ダイアモンド

上杉 初


合成ダイアモンド

左:0.079ct
右:0.071ct

前回は無色に近い合成ダイアモンドについて紹介したが、今回は最近入手した2ピースの合成ダイアモンドについての報告を行う。これまでの黄色の合成ダイアモンドとはやや異なった特長を有するため、慎重な検査が必要である。今回の合成ダイアモンドとこれまで我々が検査してきた合成ダイアモンドの類似点及び相違点を比較しながら説明していく。


検査内容

■形状
マーキース ブリリアント(2ピース共)

■寸法
3.71×2.25×1.60mm(A石)
3.94×2.03×1.49mm(B石)

■重量
0.079ct(A石)0.071ct(B石)

■カラー
度の高いオレンジ・イエロー(AB石)
天然ダイアモンドのGIAスケールでファンシー インテンス オレンジ・イエロー程度である。これまで持ち込まれた合成石のカラーとほぼ同様のカラー範囲である。 

■クラリティ
天然ダイアモンドのGIAスケールでSI2程度(AB石)    

■インクルージョン

A石:

クリスタル、フェザー、キャビティー、不自然なピンポイント群、サーフェスグレインライン、インターナルグレイニング、ベアーデッドガードル

B石:

クリスタル、フェザー、キャビティー、ピンポイント、サーフェスグレインライン、インターナルグレイニング、明瞭な色むら、ベアーデッドガードル

これら2石には直線的で明瞭なサーフェスグレインラインが存在し、天然ダイアモンドのそれと酷似している。我々はGIAの合成ダイアモンドについてのセミナーに使用しているサンプル石のなかにサーフェスグレインラインのある合成石を見た事もあり、サーフェスグレインラインの存在で天然と合成を区別できないことは認識していたが、実際にこの2石のグレインラインを見るとこれらがいかにも天然ダイアモンドらしく思われてしまう。

■紫外線蛍光反応

A石:LW=無 SW=非常に弱い緑黄色
B石:LW=無 SW=中程度の緑黄色

B石については、短波紫外線を照射した状態での拡大検査において合成ダイアモンド特有の成長構造を示したが、A石については短波紫外線に対する蛍光反応が非常に弱いため合成石特有の成長構造は確認出来なかった。

■電導性
A、B石2石共に電導性はなし

■紫外可視分光

約550nm 付近から短波長方向に吸収が大きくなり、約450nm 付近が最大吸収値となる。その他にはピークは見られない。(A・B石共)

■赤外分光

1500cm-1から1000cm-1における窒素領域を見るとA、B石共に純粋に近いタイプIbであるが、1290cm-1付近に微妙な吸収を示すため、わずかながらタイプIaAの要素をもったダイアモンドであるといえる。

■カソードルミネッセンス

短波紫外線に対して蛍光反応の弱かったA石であってもカソードルミネッセンスにより、合成ダイアモンドの成長構造が明瞭に確認出来る。B石の場合はもっと顕著である。


検 討

今回検査した合成ダイアモンドは、様々な検査の結果、過去に検査したイエロー系合成ダイアモンドとほぼ同様の特徴を有している。しかしながら過去に検査したものと今回の石の重要な相違点は、サイズが小さいファンシーシェープであること、サーフェスグレインラインが存在することが挙げられる。

マーキースブリリアントを代表とするファンシー シェープは、ラウンドブリリアントよりも検査を非常に難しくする。検査の困難な場所に合成石としての特徴が隠れてしまう事もありえる。今回のサイズよりも小さいファンシーシェープの合成ダイアモンドが持ち込まれた場合、通常の宝石学的検査では識別が困難な事もありえるであろう。

サーフェスグレインラインの存在は天然と合成を区別する根拠にならないことを知っておかねばならない。

前回の無色に近い合成ダイアモンド及び今回の2石の合成ダイアモンドを鑑別するに当たって、カソードルミネッセンスは必要不可欠である。


まとめ

今回の2石はカソードルミネッセンスによる合成石特有の成長構造を確認することで合成ダイアモンドであると確実に識別できる。

また、拡大により様々な方向から検査することで2石共合成石特有の成長構造に起因するインターナルグレイニングも確認できた。

紫外線蛍光反応も、合成ダイアモンドの可能性を教えてくれる。今回のようなイエロー合成ダイアモンドのほとんどが長波紫外線蛍光に対し不活性であり、短波紫外線に対し弱から強の緑黄色の蛍光反応を示すのである。前回の無色に近いサンプル同様、慎重にあらゆる検査を行えば、合成ダイアモンドは識別できるはずである。 (AGTジェムラボラトリー)


陰極線によるカソーソ ルミセッセンス像
ともに合成石特有の成長構造を明瞭に確認できる。

 

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A石
クラウン側
A石
パビリオン側
B石
パビリオン側
B石
側面
    

写真撮影:伊藤弘志、川井洋一


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