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新しいタイプの合成ダイアモンド

上杉 初


グレーディング依頼を受けたダイアモンドが合成だったという初めてのケースから数年が経過したが、以来今でもごく稀に合成ダイアモンドが、持ち込まれることがある。これまで鑑別した合成ダイアモンドのほとんどは非常に濃いブラウニッシュ イエロー、オレンジ イエロー、イエローの色相であり、天然ダイアモンドのクラリティーグレーディング スケールにおいてVVSからIクラスまで、インクルージョンの非常に少ない石から、大きな金属インクルージョンを有する石まで広範囲であった。これらのタイプの合成ダイアモンドの大半は特徴的な紫外線蛍光反応、特徴的な内部グレイニングが明瞭であり、比較的簡単に識別可能である。ところが、今年6月にこれまでとは全く異なるタイプの薄いグリーニッシュイエローの色相を呈する合成ダイアモンドが持ち込まれた。今回の合成ダイアモンドはこれまでのイエロー合成ダイアモンドとは異なる特徴を有するため、この特徴および識別方法を紹介して行く。

 


写真1:テーブル内部の金属インクルージョン
  
【検査内容】
1.形状:ラウンドブリリアント(写真左上)
2.寸法:3.30 - 3.42 × 2.15 mm
3.重量:0.159 ct

4.カラー:薄いグリーニッシュ イエロー
(天然ダイアモンドのL〜Mカラー程度)

5.クラリティ:天然ダイアモンドのGIA スケールでSI2程度

6.インクルージョン:ダーククリスタル
(金属インクルージョンと考えられる。 写真1)
テーブル下に散乱したピンポイント、不自然なインデンテッド ナチュラルなどが見られる。明瞭な内部グレイニングは見られなかった。

7.蛍光反応:LW;なし/SW;非常に弱い青白色(燐光あり)

これまでのイエロー系の合成ダイアモンドは、SWにおいてグリーニッシュイエローの蛍光色を呈し、また合成ダイアモンドの特徴である成長構造は確認できなかった。

8.電導性:テーブルからキューレットの方向で非常に強いが他の方向では反応は見られなかった。

9.磁性:サンプルを糸で釣り下げた状態で、磁石をゆっくり近付けると、サンプルは磁石に微妙に引き寄せられるのを確認した。

10. 紫外可視分光:特徴的な吸収は見られない。

11. 赤外分光:1500cm-1から1000cm-1には窒素の吸収が存在しないのに、2800cm-1付近に小さく吸収があるため、この合成ダイアモンドはタイプIIa にIIb が加わったものであろう。

12. カソードルミネッセンス:合成特有の成長構造が明瞭に確認できる。
(写真2)


【まとめ】

今回のサンプルの識別で最も有効な検査は、カソードルミネッセンスであり、結晶の成長構造の確認は決定的識別要素といえる。短波紫外線による成長構造の確認はできなかったが、燐光が比較的強く長く続くことが合成ダイアモンドの可能性を強く示唆する。

また、この色相範囲の天然ダイアモンドは電導性を示すことも、磁性を示すこともなく、電導性、磁性の存在は、合成ダイアモンドの特徴といえる。このように今回のサンプルはそれぞれの検査を慎重に行えば、合成ダイアモンドという結論は導き出されるはずである。しかしながら「L〜Mカラー」の比較的薄い色の合成ダイアモンドが持ち込まれたことは、紛れもない事実であ
り、今後この程度の濃さのダイアモンドについても、より入念な検査が必要となるであろう。

(AGTジェムラボラトリー東京チーフ)


写真2:カソード ルミネッセンスにより、この合成ダイアモンドの内部構造が明瞭である。
  
【検 討】

今回の薄いグリーニッシュ イエローのサンプルとこれまでに持ち込まれたイエローのサンプルとの違いは窒素の有無であろう。濃いイエローの合成石は、純粋なタイプIbか、タイプIbとIaの混合であり、これらの窒素の含有がイエローの色の原因となる。これに対し今回のサンプルはタイプIIaおよびIIb の特徴が見られることから、窒素を含有しない。 と同時に、ある方向で電導性を示すことから、限定されたセクターだけにホウ素を含有していることが推測される。また、グリーニッシュな色の原因は一般にニッケルを含有することが知られており、今回のサンプルについても磁性があることから、ニッケルを含有することがその他の原因と推測できる。(蛍光X線分析ではニッケルは検出できなかった。)
  


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