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Gemologists' News 98年1月1日号より

ロシア製フラックス
合成アレキサンドライト

上杉 初


比較的新しい合成石であるロシア製フラックス合成アレキサンドライトを鑑別する機会を得たのでここに紹介したい。

今回検査した合成サンプルは、0.72ct、0.55ctの2石で、2個ともに日光ではブルーイッシュ グリーン、白熱灯ではパープリッシュ レッドの色相であるが、インクルージョンを多く含有することが原因で、やや暗い外観を示すため、天然アレキサンドライトの変色と非常に似ている。

拡大検査によるとフラックス インクルージョン(写真2)、ウィスピー ベール状(写真3)が見えたが、天然アレキサンドライトの指紋状に似ているため混同する可能性がある。

屈折率、比重、多色性、紫外線可視光線分光特徴については、天然アレキサンドライトとほぼ同様の特徴を示すため、この合成アレキサンドライトを天然と識別するためには、他の手段をとらなければならない。

最も有効な検査法は、赤外線分光検査であり、天然アレキサンドライトは水分を含有するため、約3500cm-1〜2500cm-1に水に起因する吸収が存在する(表のA)のに対し、フラックス合成アレキサンドライトは水分を含有しないため吸収を示さない。 今回の合成アレキサンドライトは、3300cm-1〜2800cm-1の範囲に特徴的な吸収を示すのと同時に、天然アレキサンドライトに見られるような水に起因する吸収は見られないのである。(表のB

また、この2石のロシア製合成アレキサンドライトと天然との識別を考えた場合、有効な手段が他にもあるため、簡単にあげてみる。

蛍光X線分析がその一つの手段であり、モリブデン(Mo)、ビスマス(Bi)の検出は合成の証拠となる。

0.72ctのサンプルはモリブデン(Mo)、ビスマス(Bi)を、0.55ctのサンプルはモリブデン(Mo)を検出することができた。 しかしゲルマニウム、タングステンなどの合成の証拠となる微量元素は検出できなかった。 また錫(Sn)は天然アレキサンドライトのみの微量元素として知られていたが、今回の0.55ctのサンプルにSnが検出されているため、天然であることの根拠には使用できない。 

(写真撮影:川井、伊藤)


まとめ

  • 注意深い拡大検査によるフラックス インクルージョン、グロースパターン(写真4)などの確認。
  • 赤外線分光検査よる水分に起因する吸収の有無の確認。
  • 蛍光X線分析によるモリブデン、ビスマス、ゲルマニウム、タングステンなどの合成の証拠となる微量元素の検出。

以上により、ロシア製合成アレキサンドライトと天然アレキサンドライトは明確に区別できるのである。

*今回検査した石は「ジェムス & ジェモロジー」1993年秋号にロシア製フラックス成長合成アレキサンドライトについての論文があり、これらの記述と同じ特徴を有するアレキサンドライトであることが判明した(詳細は「G&G」p.186)。


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